口腔ケアのための器具は多種多様で、歯ブラシによる歯磨きのみでは十分に健康を保てない人をサポートしています。例えば湿潤材は認知症等で開口状態が続く介護者のために使うことが出来ます。開口時間が長くなると口腔が乾燥し、菌が侵入し易くなります。それを避けるのに湿潤材は有用なのです。また湿潤材を塗布してから口腔清掃を行うと、痰などを簡単に取ることが出来ます。開口器も口腔ケアのために欠かせません。口の随意運動が難しい介護者にとって、口腔ケア中に開口し続けるのは大変です。開口器は噛むだけで安全に開口状態を保つことが出来ます。形状は様々で、バイトブロック、チューブ、パット等があります。材質もプラスチック、シリコーン、ポリウレタン等から選ぶことが出来ます。医療関係者でない場合は開口器の入手が難しいこともあるでしょうが、ガーゼと棒を使えば簡易開口器を自作することが出来ます。もちろん自作の開口器は口腔を傷つける可能性があるため、出来る限り市販されているものを使用しましょう。口腔ケア器具は他にも洗口剤、ガーグルベースン、舌ブラシ、チューイングブラシ等があります。洗口剤は清掃後に効果が生じる薬で、基本的には吐き出すものです。ですから誤嚥する人には使えません。ガーグルベースンは寝たきりの患者のうがいをサポートする器具です。開口器と同様、自作することも出来ますが、初心者は避けた方が良いでしょう。舌ブラシはいわゆる苔を取り除くための器具で、軟らかい毛が生えたタイプと、硬いヘラで清掃するタイプとがあります。いずれも材質、形状は様々で、使い方も異なります。チューイングブラシはシリコーンで出来たブラシで、歯列に嵌めて使用します。咀嚼すれば歯の表面を一気にブラッシングできる仕組みで、歯肉に対してはマッサージ効果を及ぼします。但しチューイングブラシのみでプラークを取り切ることはできません。毎日チューイングブラシで咀嚼を繰り返しても、軟らかいため口腔を傷つけることはありません。チューイングブラシは噛むだけで清掃できるため、認知症の患者用に使われるケースが多いとされます。咀嚼という行動は唾液の分泌を促進し、筋肉を鍛えますから、清掃以外の利点もあるのです。